愛の記念日

アンドレアスと出会って二年目の記念日を目前に、ホープの心は弾んでいた。
だがお祝いの計画を練るホープに、友人が心ない言葉を浴びせた。
大富豪でプレイボーイのアンドレアス。
その彼にとって、ホープはただの愛人でしかないと……。
そんなわけないわ! でも、本当にそう言い切れる? 確かに将来を話し合ったことも、家族や友人に紹介されたこともない。
私は彼にとって、都合のいい存在だったのかしら。
数日後、その不安は現実となる。
デッキの上に、女性が倒れている。
マルディビノ公国の王子ニコは船に飛び乗り、黄褐色の髪をした美しい女性を助け起こした。
ビーチハウスに運び、一昼夜つきっきりで看病すると、彼女はようやく意識を取り戻した。
エラと名乗るその女性は、彼が誰か知らないらしく、物怖じしない態度で接してくる。
ニコには新鮮な驚きだった。
このまま正体を隠し続け、普通の男として恋を楽しむのはどうだろう? しかし身分を偽ったままの恋には、未来などなかった。
両親の葬儀が終わった後も、レイチェルは墓地に佇んでいた。
義父の親族の、蔑むような視線が胸を締めつける。
義父マサイアスは、欲深い妻によって破滅したも同然だった。
そしてレイチェルは、その妻の娘なのだ。
その時、セバスチャンの姿が見えた。
親族の中で唯一優しかった彼に、レイチェルは心を寄せていた。
「心からお悔やみを申しあげるわ」。
レイチェルは声をかけた。
だが、こちらに向けられたセバスチャンの冷たい目を見て息をのんだ。
幸せな気分で目を覚ましたルーシーは、隣にいるはずの男性が消えているのに気づいて愕然とした。
彼にとっては一夜限りの遊びにすぎなかったのだわ。
それも当然だ。
めったにデートもしない私が、出会ったその日に男性とベッドをともにしたのだもの。
だらしのない女と思われたに違いない。
もう彼のような相手には二度と会えないわ……。
ルーシーは彼に贈られた薔薇に目を留めた。
花びらにそっと触れたとき、彼女は言いようのない胸騒ぎを覚えた。
豪華な調度に囲まれた部屋でジーナは気後れしていた。
ここは私のいるべき場所ではないわ。
ジーナは生まれ落ちてすぐ養女に出された。
死期の迫った祖父が苦労して彼女を探しだし、ほんのわずかの言葉を交わしたあと、亡くなった。
今、遺言が読み上げられようとしている。
私は何もいらない。
祖父の養子であるロスが、一族の帝国を引き継げばいい。
だが遺言の内容にジーナは耳を疑った。
ロスと彼女の結婚を条件に、財産が分与されるというのだ。
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